弊社の各店舗ご提供している食材は、優れたものを求めてスタッフ自らが全国各地に足を運んで探し出してきたものです。
豚肉は北海道、群馬、茨城、栃木、埼玉から、お米は茨城、島根、山形県からと、食材の入手先は全国あちらこちらへと広がってしまいました。入手方法も生産者とより直接的な取引経路を整備。現時点で選択し得る最高品質の食材をお客様にお出ししています。
この食材探し行脚を通して、経験が浅かった私たちには今更ながらに勉強させられることも多々ありました。
同じ食材でも品質には大きな差があること。そして優れた品質は、清らかな空気と水、土壌が持つ力に加えて、人の労を惜しまない仕事によって産みだされていました。丹精込めてつくられた食材は、香り高く、味は濃厚で歯触りや喉ごしといった質感も実に素晴らしく、食材探しの担当スタッフも思わず「うまいッ」と唸る力強くて堂々としたものでした。
労を惜しまない手業によって生み出された産物と、そこに込められた生産者の方々の思いを寸分損なうことなくお客様に手渡しすること。
これが『Made in 大地』に込めた私たちの思いです。
今ではすっかり都会の風景ですが、昭和三十年代までは江戸川区南部もそれは素晴らしい田園風景が広がる村落でした。梅雨の声を聞く時季になると一斉に田植えが始まり、ひと月あまりも過ぎれば稲はすっかり大きくなって風景は見渡す限りの緑の草原へと一変します。
一陣の風が稲を大きく揺らしつつ田圃を渡ると青々とした稲田はまるで波立つ水面のようで、夏の清々しい涼しさを目にも感じさせてくれたものでした。まさに薫風という呼び名に相応しい、草の香りをたっぷりと含む実に爽やかな東京湾から吹き込む南風でした。
一方、日本の米作りは、仲間の固い絆のもとで時に自然と闘いながら、圧倒的な手間と労力を注ぎ、我が子を育むかのように稲を育てて、ようやく秋の収穫を迎えることができます。稲作の歴史が日本人の勤勉さを鍛え上げてきたといわれる所以でしょう。
ダイチ・コーポレーションの飲食店の屋号を『田』とした理由のひとつには、こうしたかつての江戸川区の風景やそこに暮らしていた人々の絆に対する憧憬にも似た思いがあります。
※:古い航空写真は「goo地図」の古地図(東京)昭和38年から引用・改変しました。